NOVEL

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「さあ行くわよ! ほらみんな荷物持って!」
「あの……涼宮さん……本当にこの格好で行くんですかぁ……?」
「何言ってるの! 今更後戻りなんて出来ないんだから、ホラホラ部室から出て! キョン、早くしなさい」
それは、長期休みに遠くへ家族旅行に行くときの慌しさにも似ていた。
朝比奈さんを除く全員が、朝学校に来たようにマフラーなりコートなりを着込んでいる。
男子二人が抱えるのはこんもりとでかく膨れ上がった買い物袋。これが昨日の買出しによる収穫である。
朝比奈さんはあの妙に露出の多いサンタ姿の上から長めのコートを着て、五人分の三角帽と自分の着替えを抱えている。
少しだけでも寒さが凌げるようにと首にはマフラー、両の手には手袋。
ハルヒは全員が部室から出たのを確認すると、勢いよく部室のドアを閉め、鍵をかけた。いい加減蝶番も限界を向かえそうだ。
「それじゃあいざ出陣! 出発進行ー!」
俺はそのドアに貼り付けられた『本日臨時休業! SOS団』という紙が風に踊るのを尻目に、ハルヒの声に引っ張られながらそこへと向かった。

俺が昨日何を提案したのか。
別に大層なことを考えたわけじゃない。ただ、純粋に単純に考えただけだ。
長門は家にいなきゃならない。でもSOS団全員で集まりたい。
じゃあどうする?
答え、長門の家に行けばいい。
ついでにあの殺風景な部屋をクリスマス風に飾りつければどうだ、と言ったところ、それも採用。昨日の買出しに至るわけだ。
そして今現在俺と古泉が抱えている袋の中には、17日にハルヒが持ってきたような飾りのほかに、クリスマスにはどう考えても関係ないような生活雑貨までもが詰め込まれていた。これで長門の部屋は随分と印象が変わることだろう。

「……ここね」
先頭を突き進んでいたハルヒは立ち止まり、見るからに高級そうなマンションを見上げながら呟く。
そうこう考えている内にもう着いたらしい。
団長は何かに気付いたようにこちらへ振り返る。俺は何号室だっけ、という言葉が聞こえてくる前に、
白い息を吐きながら「708号室」と言葉を投げた。
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