NOVEL

□涼宮ハルヒの信頼
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あたしは、走っていた。疲れても、休んでる暇なんてなかった。
向かったのは、自分の家ではなくキョンの家。
なんとなく、自分の家には行ってはいけない気がした。
「はぁっ…はぁっはぁっ……」
息を整える。運動が出来てよかったと思う。じゃないと、こんなに早くキョンの家に着けないから。
インターホンを押し……ちゃ駄目だっ!
今は夜。それくらい、周りの暗さを見ればわかる。
迷惑…だよね……。
どうしよう…。キョンにだけ気付かせる方法ってないかしら。
「あ……!」
ポケットに入っていたのは携帯電話。都合が良すぎる気がする。
まあ、神様が普段のあたしの努力を認めてくれたってことね。
電話しよう。電話帳からキョンの名前を探す。
数回の着信音があたしの耳に届いたと思うと、電話をとる音がした。
「…はい?」
キョンだ!
「5秒以内に窓を開けなさいっ!」
つい、いつもの口調になる。
「…どちら様ですか?」
「あたしよ。涼宮ハルヒ」
「あの、間違いじゃ…」
そっか。4年前だから、キョンはあたしのこと知らないんだ。
「あ。ごめん…。窓、開けてもらえる?」
「………」
窓が静かに開く。キョンの顔がぼんやりと見える。やっぱりちょっと幼いわね。
そういえばあたし、キョンの中学時代が見たかったんだっけ…。
ふと、寝る前のことを思い出す。
「あー…外、出れる?」
すると、窓が閉まり、数秒の差の後、玄関が開いた。
そうさせたあたしが言うのも何だけど、意外と無用心ね。
あたしとキョンの視線が合うと同時に電話が切れる。
「何ですか?」
「…………」
質問を無視して、キョンの顔を見つめる。見れる時に見ておかないと損だからね。
「あの…」
キョンは困ったような、不思議なような顔をした。
「キョン」
「え?」
「あんたは4年後、素晴らしい団に入っているわ。萌えるマスコットキャラに、
 無口の文学少女、謎の転校生もいるわ!そして、このSOS団団長のあたしもね!」
キョンがますます変な顔をした。でもあたしは続ける。顔が笑って仕方がない。
「そんな団に入れるんだから、断ったら死刑よ!」
きっと、今のあたしは笑顔で訳の分からないことを話す知らない人なんだろう。
それでも、キョンは笑った。これがつられニッコリってやつかしら。
「何故、分かる?」
「そうね…」
少し考える。でもそれも数秒だった。
「あたしは未来人だからよ!」
間違いでは無いわよね。
「じゃあ、俺はそこに居るんだな?」
笑って、それでも不安げに、キョンは聞いた。
「ええ」
口調を優しくする。キョンはそこに居るってこと、わかってほしいから。
「ちゃんと、居る。絶対に。だから、」
キョンをそっと抱きしめる。キョンは驚いていたようだった。
でも、そんなの関係ない。一人だったあたしに手を差し伸べてくれたのは、キョンだった。
なら、今度はあたしがこいつの不安を取り払って、手を差し伸べてあげよう。
「そばにいて、あたしを助けてね?」
もう、このままで良いや―。
そう思った瞬間、あたしの視界が真っ暗になった。
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