『……別れようか、私達』


口元を緩めて私は後ろから抱きついてくる亮の手を解いた。


「は…?意味分からん…」


振り向いた亮の表情はポカンとしていて、修羅場なはずなのに思わず声をもらして笑った。


「なあ…なに?なんなん…」


そんな私に苛つきを隠せないようで亮は私の肩を掴んで向かい合わせた。そんな亮に私はまた緩く笑った。

言えないよ、まだ。


『もう別れたほうが…、亮の為かな、って…ね』


首を傾げて亮に問い掛けるように笑ったら、亮は顔をしかめて私を強く抱き締めた。


「理由、ゆってや」


『だから、ね…。亮の為なんだよ…』


「だからっ…!それが、なんなのかって聞いてんねんって!」


『…ごめんね…。亮…』


それでも、弱虫で、決心のつかない私は腕を伸ばして亮から離れた。


「っ!」


『…バイバイ!亮』


にっこりと笑って私は亮の前から姿をけした。



好きだったんだ。

好きで好きで、たまらなかった。

だから、私は亮から離れたの。

このまま、弱く、醜くなっていく私なんかを見てほしくなかったから。

だからね、決して今だって自分を可愛いだなんて思わないけど、亮の中に少しでも可愛い私の思い出が残るように。





(私、死ぬんだって)


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