小説

□fog (※R18指定) 連載中
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あの日からけっして消えることのない、記憶。
思い出すのも忌々しい。
なのに一日も、頭から離れない。

一時間も、一分も、
一秒も。

今この瞬間さえも。



‡‡‡


風が、気持ちいい。
蒼く澄んだ空には、雲一つ見当たらない。
意識の外に、運動部の声が聞こえる。

今日は何だか穏やかな日だ。


コンコン

和かな静に、ノックが響く。

「誰」

来訪者は草壁だった。
もう、そんな時間か。

「よぉ恭弥。…ん、どうした」

「何が」

「珍しいな、お前がそうして呆けてるのも」

「…呆けてない」

キッと奴を睨む。
動じないだろうけど。

それにしても、久しぶりだ。
こんなに穏やかにいられるのは。

何故だろう?
ふと眠気さえ覚える。

「さて恭弥、そろそろ校内の見回りに行くか」

「うん」



‡‡‡



まだ残暑の残る季節。
今日はやけに涼しかった。
ひんやりとした空気が心地良く僕に纏わる。

「今日は涼しいね」

少し目線を上げて、問う。

「ああ、まだこの時期なのにな。」

「肌寒いくらいだよ」

「今日は学ランないのか?」

「だって暑いと思ったから」

他愛ない会話をしていて、ふとおかしな事に気付く。

「…ねえ、今何時なの」

「今か?えーと…17時過ぎだな」


おかしい。
生徒に、会ってない…?
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