小説

□fog (※R18指定) 連載中
2ページ/6ページ

17時過ぎ…
何で今まで気付かなかったのだろう。

「ねぇ」

振り返る、逆光で顔が見えなかった。
紅い光に濃く暗い影が、何だか怖い、という感情を幽かに呼び起こす。

「どうした?」

この状況を、分からない筈がない。
ならば、

「君は、誰だい」

黙り立ち尽くす『それ』は、少し笑っているように見えた。

目を細める。

「勘がいいなぁ恭弥は」

「やめてくれる、気持ち悪いから」

どこからかすう、と紫煙がたち込める。

「不覚だったよ、まさか」

「君がいつも傍に置いている部下ですものね、油断すると思いまして」

間合いを取る、がすぐに詰められてしまった。
少しずつ目が慣れてきて、顔が見えてくる。

なびく藍色の髪が、

切れ長のオッドアイが、

その細く長い指が、近付いてくる。


「雲雀、恭弥」

「やだ、来るな」

「つれない事言わないでくださいよ…」

油断して、触れそうになっていた彼の手を、寸での所ではねのける。

「何しに、来たの」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ