小説
□fog (※R18指定) 連載中
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17時過ぎ…
何で今まで気付かなかったのだろう。
「ねぇ」
振り返る、逆光で顔が見えなかった。
紅い光に濃く暗い影が、何だか怖い、という感情を幽かに呼び起こす。
「どうした?」
この状況を、分からない筈がない。
ならば、
「君は、誰だい」
黙り立ち尽くす『それ』は、少し笑っているように見えた。
目を細める。
「勘がいいなぁ恭弥は」
「やめてくれる、気持ち悪いから」
どこからかすう、と紫煙がたち込める。
「不覚だったよ、まさか」
「君がいつも傍に置いている部下ですものね、油断すると思いまして」
間合いを取る、がすぐに詰められてしまった。
少しずつ目が慣れてきて、顔が見えてくる。
なびく藍色の髪が、
切れ長のオッドアイが、
その細く長い指が、近付いてくる。
「雲雀、恭弥」
「やだ、来るな」
「つれない事言わないでくださいよ…」
油断して、触れそうになっていた彼の手を、寸での所ではねのける。
「何しに、来たの」