すてき!

□雨があがる頃に
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雨があがる頃に(相互記念)


きらきらと煌めくのは紫陽花に滴る昨夜の雨粒。太陽の光に反射して、少しだけ眩しい。足下の草にも同じ様に雨粒が降り注ぎしっとりとした感覚に眉間に皺が寄る。

昨夜の雨はひどかった。
永遠に続くんじゃないかと思うくらい長い雨。朝方まで降っていたのではないか。
風も強めでガタガタと鳴った襖に、認めたくないが僅かな恐怖心が生まれたのも事実。こんな時に、忍務だなんて八の馬鹿やろうと心の中で何度も呟いたのも、また。

「風邪引くぞ?」

背後からかかった声に、一言だけで誰だか分かってしまった自分に苦笑して。ゆっくりと振り向けば、眩しいくらいに笑顔を浮かべた八が立っていた。

「八、今帰り?」
「あぁ。学園長先生に報告してすぐだから」
「そう。…って、八びしょ濡れじゃん。風邪引くって」
「兵助もだろ?んな薄着で。もう夏も終わったんだから」

ははって空笑ってから、まっすぐにこちらを向いた八にドキリとする。たまにするその射抜くような強い眼差しに俺は何も言えなくなる。
心臓が跳ねるように鼓動し、熱が顔に集まる。

「八、無事でよかった」

だから、俺は八の大きな手を両手で握って一言だけ心からの本音を告げるのだ。
八は必ず、空いてる方の手で頭を撫でてくれるから。俺はそれがとても好きだから。
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