ゆず一家
□はちみつ(第13話)☆厚治
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窓越しに会話した数分後
私の部屋のドアを軽くノックする音に
また一つドキッと大きな音を鳴らした。
はい、と返事をしてしまえば
恐怖が、逃げ出したい全てが明らかになってしまう。
何度か叩かれるドアにも
どう対応していいかも解らずに
「……おい、」
今すぐにでも耳を塞いでしまいたいという気持ちをよそに
私を呼ぶ厚治の小さな声さえも耳の奥で大きく響いた。
「…何で返事、しねーの」
ドアの向こう側で語りかける厚治の声に
訳も解らず涙が溢れ出してくる。
「…開けんぞ、」
私の返事も聞かず
静かに開かれたドア。
その先には私の瞳を捉えては逸らしを繰り返す厚治の姿。
「っ、何…泣いてんの?」
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