day

memory
テニプリ連載中
下に行くほど新しいので連載は一番下からご覧ください。また、続きページも下が@P上がAPです。
◆キラキラ光る闇の中 

@@@「あーおーいー、今日は遊園地に行くぞ!」

朝靄が立ち込める窓の外。私はいつもより早起きをして葵に遊園地へ行くことを告げた。

「え、今からですか!?」
「そうだ!お前も一緒にだぞ?さぁ、準備をしろ!!」

あはあはと笑いながら葵のクローゼットから服を選ぶ。葵はしばし唖然としていたがすぐ笑ってはいっと返事をした。どうやら余り不機嫌ではなくなったらしい。やはり葵も遊園地とやらが好きなのだろうか。跡部くんの言うことは正しいな。すごいな跡部くん。準備ができたところでじいやにいってくる、屋敷はまかせた、とそういって葵とともにリムジンに乗り込んだ。そういえば跡部くんは跡部財団の息子だったな、車はこんなものでよかっただろうか。跡部くんの家に跡部くんを迎えに行って笑われるのはごめんだ。なんだか一人考えて苦笑をもらしたら葵がふと口を開いた。

「あの・・・××様?」
「ん?なんだ?」
「その・・・どこへ向かっているのですか?」
「あぁ、遊園地だよ。言ったではないか」
「いえ、そうではなくて」「あ、ああ。そうだ、今日は跡部くんも一緒なのだよ。先に彼を迎えに行くんだ」
「・・・え・・・・そ、そうですか」

葵もまた私とは違った苦笑を漏らした。そうして葵はまた不機嫌になってしまった。何がいけなかったんだろう。

「あ・・・ついた」

気がつけば跡部くんの家だ。思ったよりも大きいな、でもうちと同じくらいかな。運転手にドアを開けてもらい跡部くんの家の執事に案内されると跡部くんはもう外で待っていた。

「おはよう!跡部くん」
「遅い。俺を待たせるなんていい度胸じゃねえか」
「む、まだ9時30分だぞ?遅かったか?」

時計を見て言った私に心なしか跡部くんの顔が赤くなった。そんな跡部くんの後ろから忍足くんと向日くんと宍戸くんが現れた。芥川くんはいないのだろうか。
「××ちゃん聞いて。こいつ一番今日はりきっとんねん」
「30分も前からこうやってまってんの」
「激ダサだぜ」
「う、うるせえぞお前ら!」
「ははは、可愛いなあ跡部くんは。ところで君達はどうして?」
「お、俺様一人が女二人について遊園地に行くのは癪に障るから呼んだんだ」
「××ちゃん私服も可愛いで」
「君は私服でも厭らしいな」

なんだかんだで跡部くんを迎えに来たものの既にわいわいはしゃいでいる。ふと、葵のほうに振り向くと葵はもっと不機嫌になっていた。

「・・・えっと、し、紹介する。うちの侍女の「永遠(えとう)葵です。よろしくお願いします」

葵は始終不機嫌極まりないといった感じでいた。兎に角遊園地に向かうべく私たちはリムジンに乗り込んだ。リムジンのなかで向日くんと忍足くんが一番煩かった。数分ほどして遊園地についた。思ったよりも大きなその場所は言ってみれば公園の延長が最大限になったようなものだ。取り合えず誘った私が人数分の入場料などを払って中へ入った。

「おれジェットコースター乗りたい!一緒に乗ろうぜ亮」
「俺はなんでもいい」
「××ちゃん俺と一緒に観覧車乗ろうやVv」
「(スルー)葵、私たちもジェットコースターとやらに乗ろう!?」
「え、あ、はい」

なんかわいわい言っている忍足をスルーして私は葵と跡部くんの手を握ってジェットコースターとやらに向かって走り出した。その後を忍足くんと向日くんと宍戸くんがついて来る。葵は相変わらず不機嫌だし跡部くんはツンデレだし忍足くんは変態だし向日くんはぴょんぴょん跳ねるし宍戸くんは普通だし。でも何だかんだで一番楽しんだのは私だったのかもしれない。
「つぎ、つぎあれ行こう!」
「俺はいい。疲れた」
「・・・私も、少し休ませていただきます」
「んじゃ××は俺達と行こうぜ」
「せや。できれば2人っきりで行きたいけど」
「お前はちょっとだまれ」
「なんやて宍戸!」
「喧嘩をするな!ほら、行くぞ?」

ぎゃぁぎゃあ言いながら××は乗り物の方へ行ってしまった。葵は相変わらずふてくされた様な顔で跡部の隣に腰を下ろした。暫し沈黙が続く。先に口を開いたのは跡部だった。

「お前、その面何とかできねえのか、あーん?」
「・・・・・・・あなたが跡部さまですか」
「話し逸らすんじゃねぇよ」
「私はあなたと話などしたくありません」
「他所の屋敷の侍女が誰に向かって口聞いてんのかわかってんのか?あーん?」「・・・っ申し訳ありませんでした。ではこれからはこのような失態がないように口を閉じておきますね」「閉じる前に話をきけ。これは”お願い”じゃない”命令”だ」
「・・・嫌いです。あなたのような人間は」
「ああそうかよ。・・・で、聞かせてもらうぜ?その膨れっ面の理由を。見てて吐き気がするぜ」

後ろからは乗り物の動く音がする。世界の果てはここにあるのか。だとしたらきっと此れは酷い尋問に違いない。葵は隣で一緒にベンチに腰掛ける跡部景吾を心の底から疎ましく思った。疎ましいのは実際跡部景吾だけではないのだが。葵はそれでも××の友人ということで仕方なく口を開いた。これは決して跡部景吾のためではなく彼を慕う自分の主一ノ宮××のためだった。良い気分ではない。良い気分なわけがない。××の学校の女子が揃って熱を上げるこの跡部景吾と言う人間は葵にとってはゴミと同じでしかなかった。否、彼女にとって××と××の屋敷の人(彼女の肉親含む)以外はこの地球上に生きるすべてのものはゴミでしかなかった。それほど××の存在は葵の中で大きかった。

「・・・・私は、××様が生まれてずっと××様の御傍にいました」
「・・・・・」
「私は××様のことを誰よりも近くで見ていました。感情を余り表に出されない××様。だけど私にだけは違った。私といる時だけは笑ってくださっていた。それは私の自惚れかもしれないけど、××を知っているのは私だけだと思ってた。なのに――――」
――――あの日大きな笑い声と蔓延の笑みで帰ってこられた××様を見て悔しかった。あんなふうな笑顔を私は見たことがなかった。知らなかった。あんなふうに笑うことができる××様を。何より悔しかったのは、あの笑顔を作ったのが私ではなくその日初めて逢った跡部景吾と言う人間によってということ。
「悔しくてたまらなかった!!どうしてあなたなの!?どうして私じゃないの!?誰よりも××様を好きなのはこの私なのに―――!!」

言ってはぁはぁと呼吸を繰り返す葵。跡部は黙って葵の言葉をすべて聞き取った。そして彼女が話し終わったのを確認すると言葉を紡いだ。

「知ってるか?何で今日、あいつがここに来ようなんていいだした理由」
「・・・・しりません」
「お前の為なんだよ」
「え・・・」
「お前が最近機嫌悪いの気にしてお前に喜んで欲しかったんだとよ。今日ここにきたのは全部お前の為なんだよ」
「―――××・・・さま、が」


「おーい、あおいー。お前も一緒に乗るんだぞ!こっちこい」

手を振る××えを見て葵は胸の奥が暖かくなるのを感じた。自分の主は誰よりも私に優しかったことを葵は思い出した。くだらない嫉妬をしてしまったと思う。葵は無言で跡部に一礼すると××の元へ走り出した。
「(ありがとうと・・・言わなければ)」

end

2009/08/14(Fri) 00:01

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