クリスマスフリー09
□帝国サンタレンジャーズ
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また日が昇る。
仕事や学校を終えた人々は皆、家庭に戻って寝る仕度をしている。
瑠璃壁に守られた国の夜が始まろうとしていた。
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「陛下、そのような大荷物は小官がお持ちします」
「いいよ、バイバルス。君は護衛、これは落としてはいけない大事な荷物。もしもの時に困るだろ?」
「はぁ、しかし」
「それにアウターでは昔から親が内緒で子供の枕元に置くっていうぢゃないか、ねぇアスト?」
「はっ、そのように文献には記されておりました」
「だからボクが自分で運びたいのさ。
それよりもミルカ、最初の家は決まったのかい?」
「は、陛下。妾が察しまするに、こちらから1番近いのはパレッティ家ですが…」
「パレッティの兄弟は真面目で努力家なんだ、来週ある試験に向けて、遅くまで二人して勉強してるはずだ。まだ寝てないな」
「やはり。しかしこの家を後回しにすると後々やっかいな回り道になってしまいまする」
「陛下、祖母上、仕方がありません、回り道になっても後で行くしか…。」
「うん、バイバルス、君はどう思う?
戦隊モノのリーダーはレッドと相場が決まっているからね。君の意見も聞きたいな」
「はっ、小官など陛下の御前でそのような…!」
「ん、バイバルス卿、何か落とされましたぞ。これは…走り書き?」
「あ、それは…」
「‘ネズミのぬいぐるみと横笛’…?」
「キエフ侯、読ま…!」
「バイバルス卿、これは…??」
「それは、小官の姪たちの欲しい物でございます。姉に頼まれ、後で小官が用意しようと…」
「ふふっ、やはりバイバルス卿はとても優しい方だ。良い父親になるのでしょうな」
「きっキエフ侯…!」
「お取りこみ中悪いけどさ、‘ネズミのぬいぐるみと横笛’だろ?
ボクが自分で配って書かせた子供達のサンタへの手紙の中の、君の姪っこ、マリーナとエイリーのやつに書かれてたから、ちゃんと用意してあるよ」
「まっ、まさか!」
「同じの頼んぢゃったんだね〜、よっぽど欲しいんだな〜」
「は、陛下、ありがとうございまする!」
「それはそうと、ようやっと行き先が決まったようで、よろしかったですな、陛下」
「そうだね、ミルカ。
最初の行き先はバイバルスの家、マリーナとエイリーだ!」
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一行はバイバルスとは似ずに可愛いらしい顔をした少女たちの寝顔の元にプレゼントを届け、その後も順調に配り回り、もちろんパレッティ兄弟の所も忘れず回り、全てを配り終える頃には、彼らの忌ま忌ましい太陽も沈み始め、今日もまた、暗闇の夜を明かりで照らす1日が始まろうとしていた。
おわり。