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□クリスマスフリー08【トリニティ・ブラッド】
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クリスマスフリー
【トリニティブラッド】













そう、あれは、
二人が出会った年の冬のこと。















「用事は片付きました。ローマに戻りましょう、神父トレス」

扉の前に控えていたトレスに、用事を終えたカテリーナは声をかけた。

「肯定。明日には聖誕祭の大ミサが控えている。早急に帰還して備えなければならない」

今夜はクリスマス・イヴ
。カテリーナは早く帰って、明日のミサの確認をしなければならない。

「えぇ、そうね…。
明日はクリスマス…。
今年ももう終わるのですね…」

「…」

「あら、雪だわ…!」

外に出た二人の頭上に、白いものが静かに落ちてくる。

「どうりで冷える訳です。
…神父トレス?どうしました?」

トレスは無言で上を見ている。

「雪…」

「雪を見るのは初めてですか?」

「肯定。データにはあるが、実物を確認するのは初めてだ」

「そう。
この勢いでは明日はホワイト・クリスマスになりそうね。
明朝は雪掻きをしてもらわなくてはなりませんね」

「肯定。問題ない」

「ふふ。
きっと子供たちは喜んで雪遊びをしますね」

そう言ってカテリーナは‘鉄の女’とは思えないような、柔らかな表情で微笑した。

「…ミラノ公も‘雪遊び’を…?」

「え?
えぇ。昔は。ミラノで暮らしていた頃に何度か。
クスッ、あなたも興味があるのですか?」

トレスが珍しい事を言うので少し驚きつつ、カテリーナは答えた。

「…否定…」

「?」

トレスの煮え切らない返答をカテリーナが不審に思った、その時。

「カテリーナさ〜ん!トレスくん!
雪!雪ですよ〜〜〜!!」

軽い足音と共に二人の元に走って来る、あの長身の人物は…

「アベル…?」

「濡れて風邪引いちゃうと大変ですから、傘、持ってました!
はい、カテリーナさん、どうぞ」

そう言いながらアベルはカテリーナの白く凝った刺繍の施された傘を差し出す。

「ありがとう、アベル」

アベルの笑顔につられて、少女のような顔で返すカテリーナを見て、アベルの笑みはさらに深くなる。

「へへへッ。どういたしまして。
はい、トレスくんも。そのままじゃ風邪引いちゃいますよ」

トレスの分の黒い傘を差し出しながら笑いかける。

「否定。俺は機械だ。風邪は引かない」



そう言うなり、トレスは一人、足速に車に向かった。




















おわり。







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