めいん

□20120505
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『ジロ君、今日誕生日なん?』


「え!」


時刻は0時ちょっと過ぎ。
高校生になったおれは随分と夜更かし出来るようになった。
今日だって、大好きな丸井君とこうして電話越しに話したりしてる。
中学生の頃、猛烈にアピールしてようやく丸井くんと仲良しになれたおれの、一日の楽しみの一つ。
そんな電話越しで、いきなりそんなこと言われて。
おれだってたまげるよ。


「な、なんで?知ってんの?」

『うちの参謀なめんな。』


…ですよね。
立海の柳を侮っちゃいけない。
何せうちの跡部の幼稚舎の頃の作文の内容を知っていたくらいだ。
侮れねぇ。

だけど、おれの悪い癖。
どうしても浮き足立っちまう。


「…まぁ、誕生日っつっても、ようやく丸井くんと同い年になれただけだCー。」


そうそう。
ただそれだけのことじゃん。
落ち着けよおれ。
別に祝って欲しいとか…期待しちゃダメなの知ってるCー!


『なに言ってんの?めでてぇじゃん。』

「ぅえ、ぁあ…?」


ヤバイヤバイヤバイヤバイ…。
変な声出たおれ。
丸井くんにそんなこと言われたらおれマジ蒸発しちまうんじゃねぇかな。


「え、だって、こどもの日だよ?」

『うん?』

「大人になっても、こどもの日なんだよ…?」

『…うん。』

「え。」

『は?』

「は?」

『…で?何が言いてぇんだよジロ君は…。』


いやおれだって何言いたいのかわかんねぇってかわからなくなってきたよ。
むしろどうしたらいいんだよ…。


「も、もうE〜じゃんっ。俺の誕生日だからって別に何があるわけでもないC〜。」

『…ふ〜ん。じゃあジロ君、今日暇なの?』


こここここれは!
え、何?
おれ期待しちゃうよ?!!
そりゃあ暇かって聞かれたら暇だよ…。
おれがはずかCーからって、跡部たちが盛大に祝ってくれるってゆってたの断っちまったし…。
照れ隠しでいいよいいよーそんなん!とかゆってたおれに、みんなは、高校生になったばっかで忙しかったから、せっかくの休みだし思う存分寝させてやろう、とかゆってくれて、いや嬉Cーよ?
盛大に祝ってくれようとしたことも、休ませてくれようとしたことも、嬉Cーよ?
でもなんか…寂Cー…てゆーか…。


『別に今日が特別とか思ってないんだろぃ?』

「…え、と。」

『そしたらさぁ、朝から俺の買い物に付き合ってよ。東京でさ、欲しいもんがあるんだわ。』

「え…、」


もしかしてもしかしなくてもこれは…!
で、でででで、デートなんでは…?!


「い、E〜の…?」

『むしろジロ君のがいいの?俺の買い物付き合わせること。』

「それは全然!大歓迎だC…!」


丸井くんと一緒に過ごせるとか…!
それこそが最高の…


『んじゃ、覚悟してろぃ。忘れられない誕生日にしてやるよ。』


うわああああああ…!
おれしぬ!もうしぬ!たぶんしぬ!!

ヤバイ。
嬉しすぎて涙出てくる。


『それじゃまた朝なー。』

「う、うん!!」


どうしよう…!
丸井くん、ありがとう!
マジマジありがとう…!!


『あ、忘れてた。』

「へ?」

『ジロ君、お誕生日おめでとう。』









その後おれは、どうやって電話を切ったのか覚えていませんでした。



2012.05.05




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