めいん

□芥川慈郎という男
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【忍足】


あんな、ジロちゃん。
関西人かて、人間なんよ?


「忍足ー、何してんの?」
「あぁ、ジロちゃん、おはよう。今日はちゃんと起きてるんやね?」


珍しく朝のこの時間帯にジローに声かけられたら、誰かてこう聞きたくなるやろ?
せやから俺も聞いてやったんよ。
そしたら…


「おれが起きてちゃダメなの?てかおれの質問スルーかよ。」


あ、うん。
今のは俺があかんかったよな、ごめんなジロちゃん。
ただ、ここでのニュアンスが読んでる皆さんに伝わっとらんのが物凄く残念というか、悲しいわ…。
あんな、顔が怖いねん。
あ、いや、ちゃうな。
なんかちゃうわ…顔は可愛いんよ、うん。
いつものジロちゃんなんよ?
せやけど…オーラ?
なんや、怖いねん!
ドスの利いた声ってあるやろ、あれを少年な感じにしてな、そうそう、細い声なんやけど、その裏になんや絶対的な圧力を感じんねん!

俺は一先ず、変な汗を拭いながら、笑顔でジロちゃんに謝ったんよ。


「あー忍足マジうぜえ…。」


その一言を残して、この子眠りについてしまったんやけど…。
流石の俺かて泣くよ?
ほんまに泣いてしまうよ??


「あの…ジロちゃん?ごめんなー、なんや俺があかんかったよねぇ??」


必死に下手に出てジロちゃんのご機嫌を直そうとする自分…。
端から見ると可哀相過ぎるわ…。
あ、なんや目から水が出てきそうになったわ。
せやけどその甲斐あって、なんとかジロちゃんの眠りを妨げることに成功しました。


「…なんだよ忍足。」


あ、あああ、明らかに不機嫌なんやけど!


「あんな、さっきのこと謝るわ、ごめんな?それと、俺は今岳人が忘れてきよった英語の予習やらされよるんよ、がっくん酷いやろー?」


その辺の女の子なら一発で許してくれるような優しい優しい声音を駆使して話をする俺。
なんや、自分でも気持ち悪い思うけど、しゃあないやん。
ジロちゃん怖いもん。


「ふーん、あそ。」


ってちょい待ちー!
質問してきたのジロちゃんの方やんかー!!
…て思ってても口には出せへんのやけどね。
(怖くて。)
せやけどもうちょい、なんか反応あってもええんと違う??


「忍足さー、」
「はい?」
「つか関西人。日本語通じねぇからマジ疲れる。」


……。
あんな、ジロちゃん。
関西人かて、人間なんよ?
しかも日本人!
言葉くらい通じ合っとるやろ?!


「関西人の主食の飴ちゃんちょうだい?」


…関西人、どんな生き物やねん。
主食が飴ちゃんて…。
せやけどこの子、素で勘違いしてそうなところが末恐ろしいわ…。
今度日本地図片手にきっちり教えたろ。
うん、そうしよ。


「…主食ちゃうけど、やるわ。」


手のひらに飴ちゃん一つ。
可愛らしい笑顔で嬉しそうにそれをとるジローを見ながら俺は思った。
あぁ、俺、跡部のこと言われへんな。
結局どんなジローも愛らしいと思うし、どっかジローに甘い自分がおんねん。


芥川慈郎は、みんなに愛される男やからね!



でも俺はマゾやないよ?!


【忍足】

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