a sentence DOLLS

□「「とびきりの作り笑顔と偽りの愛を君に」」
1ページ/2ページ

貴方を一番に愛する事が出来たのなら、もっと幸せになれたのかな


君に早く出会う事が出来たのなら、こんなに傷付かずにいられたのかな








カミサマは時にマチガイを犯す








「・・・・ぁっ、・・・っん、みず・・きっ、もうダメ・・」


「っ、・・・ん・・・まだ・・・我慢して・・・」






殺風景なこの部屋で淫らな声音を吸収する物体は少ない
壁に反響し、ただ卑猥さを助長させる

軋むベットスプリングの音が激しさを増し、そして静かに消えた
色音の消えた部屋に残された乱れる呼吸は
長く続いた行為の終わりを示す






「・・・大丈夫?」



黒瀬は隣に横たわる式部の髪を優しく撫で
押さえ切れなかった激しさを自省して言った






「大丈夫だよ?・・・なんか、いっぱい愛もらっちゃった感じ?」

「疑問系?」

「いや、もらいました・・・ありがとう」

「こちらこそ、俺もいつも式部さんから吸い取ってばっかりだし」

「それでいいんだよ、僕らの愛はすぐに溢れたり枯れたりしちゃうから
・・・だから、こうやって交換しないとね」





そっと重ねられた口唇に互いの愛おしさは募る
情事後の甘いシチュエーションだが
器用すぎる二人が互いの気持ちを推察出来ぬ訳は無い
半分は誠、半分は嘘

それぞれ別の男を想い続けながら
告げる事も出来ず溢れ出す想いと
拭い切れない寂しさに枯れてしまいそうな想いの
バランスを取り合う為の代用品

器用すぎて余りに不器用な似た者同士の惰性行為だ

それでも抱きしめ合う事で刹那の愛に酔いしれる

身体を重ね嘘を重ね、綺麗な愛で更に上塗りを繰り返し
互いに確信には触れず、その層を厚くするだけ





黒瀬の腕の中で幸せそうな笑顔と共に式部が言う



「瑞城君・・・好きだよ、だから今日はもっと・・・・・・」



黒瀬もまた、愛おしさを含んだ笑顔で



「もっと?・・・もっとして欲しい?」



そう問うが、答えを聞く前にどちらとも無く口唇は求められた
断ち切れないループの開始




惰性行為の一環として口にするアイシテルの呪文




懸け合う魔法が解けぬよう



『『 とびきりの作り笑顔と偽りの愛を君に 』』




幾重にも重なった殻が砕けるその日まで・・・互いに・・・







end
→後書
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ