Cake

□Pudding
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「欲求」
1、欲しがり求めること。望んで要求すること。
2、生活体に生理的・心理的な欠乏や不足が生じた時、
それを満たそうと行動を起こす緊張状態のこと。



―――つまり、生きとし生けるものであれば誰にでも「欲求」というものは存在するわけで。
   今、こうして僕が行動しているのは当然の事と言えるのではないだろうか。






























「…もう、良い?」

遠慮がちにそう言うと、悠理は僕を見上げた。
じっと僕を見つめる瞳は、彼女のいつものものとは違っていて。
ひどく照れくさそうな、ともすれば弱々しいものに見えた。



「いいえ。まだですよ」



少しの間の後。
そっと囁くように悠理に告げれば、彼女は耳まで真っ赤に染まった。
そんな様子があまりに可愛くて、喉の奥で小さく笑えば。
悠理の身体がびくりと跳ねた。

瞬間、悠理の顔が苦渋に歪む。
そんな彼女に視線を合わせて、悠然と微笑んでやる。

「何を、…期待したんですか?」

口角を上げ、悠理に問えば。
唇をわなわなと震わせて僕を睨む瞳が見えた。

「な、何も期待なんかしてない!」
「本当ですか?そんな風には見えないんですけどね」

くつくつと笑い声をあげながら問えば。
一瞬にして彼女の顔が林檎のように赤くなる。

不意に悠理の膝が上がる。
その足を難なく受け止め、そのまま押さえつける。

「痛っ」
「痛いのは僕の方ですよ。こんな至近距離で蹴るなんて」

悠理の足を押さえ込んだままにして、そう言えば。

「当たってなんかいないじゃないかっ!!!」

と大声で言い返された。

押さえ込んだ足をそっと撫でる。
ふる、と悠理が小さく震える。
目の前には真っ赤な瞳。
今にも泣き出しそうなその瞳は、僕を捉えたままで。
まだ余裕があるのかと、ほとほと感心する。
そのまま静かに息を吐き出すと、





「勝負に負けた方が、相手の言う事を聞くっていう約束のはずですよ。
言い出したのは悠理ですからね、大人しく僕の抱き枕になっていて下さい」





そう言って、恥ずかしさに懸命に耐える悠理をきつくきつく抱きしめた。



終。

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