まるで炎が舞うようだ。
目の前を深紅のドレスが駆け抜ける。
逃げるように、振り切るように、捨て去るかのように。
―――ただ、目の前を走り去る。
「悠理ッ!」
掴んだ腕ごと、その細い身体を胸へと引き寄せる。
こんなにも激しく求めているというのに、それを否定するかのように悠理は首を振る。
掴まれた腕を振り解こうと、その細い身体を捩る。
紅いドレスが、ヒラヒラと舞う。
炎が激しく燃え盛るように、ゆらゆらと揺らめく。
その姿があまりに官能的で。
清四郎は抱き寄せた身体を更にきつく腕の中に閉じ込めた。
「放せよっ!」
「嫌です!」
突き放す言葉を抱き寄せた身体と同じようにきつく否定する。
捩る身体を自分へと向け、無理やり視線を合わせた。
強い拒否。
否定する瞳。
全てを嘘だと決め付けた視線が、清四郎を睨みつける。
「悠理、僕はお前が…」
そう言いかけると、悠理が首を左右に振る。
何も聞きたくないと言いたげなその仕草に、清四郎の顔には憂いが満ちる。
「…嘘だ」
否定する言葉。
「お前の言葉なんて、嘘に決まってる!」
全てを否定する言葉。
腕の中にある筈の存在が崩れ落ちていく。
目の前に、確かに存在しているのに。
こんなにも近くに存在しているのに、その心は遙かに遠い。
「放せよ!」
再び告げられる拒否。
抜けていく力を、無理やり奮い立たせる。
完全なる拒否が目の前にある。
無理だと。
もう、無理だと分かっているのに。
―――それでも、諦める事は出来なかった。
燃える。
視界が燃える。
紅い炎が腕の中で苦しそうに揺らめく。
捕らえた身体を抱き寄せ、手放さない。
手放したりしない。
逃げられぬように、きつくきつく捕らえた。
「…やだっ!!!」
追いかけられる唇の隙間から零れ落ちる言葉。
炎が揺らめく。
透き通るように美しい露を浮かべて、炎が揺らめく。
それでも清四郎は追いかける事を止めなかった。
夜の闇に溶けてしまいそうだ。
完全なる拒否を受け入れ、目の前が黒に染まる。
光など存在しない夜のしじま。
あるのは、自分を燃えつくそうとする強い炎だけだ。
「 」
炎が消える。
激しく燃え盛っていた炎は何かを告げると、その意識を手放した。
目の前で俯く男を真っ黒に燃やし尽くして…。
続く。
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アトガキ
皆様、こんばんは。
さてさて、駄犬別Ver第四弾ですw
えぇと…今回は、前回までとはガラリと雰囲気を変えてみました。
その為、あまりの雰囲気の違いに驚かせてしまったかと思います^^;
すみません!でもね、でもね…書きたかったの!
どうやら、微妙に禁断症状を起こしていたらしく…。
すっごく書いていて楽しかったです!!!
いやぁ、もう完全に自己満足ですw(コラ)
まぁ、躾が足りずに我慢が出来なかったってコトで。
勘弁して下さいませッ!!!(脱兎)
ですがですが。このままではいけませんね。
ってコトで、一体何があったのか…気になる方はコチラへどうぞw