文章
□一寸前なら憶えちゃいるが
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ギギ、
錆びた鉄が重くなる
押しきるとフワリと風が踊る
息をついて貯水槽の奥へ寝転がる
・・・桜の樹、か
上半身を起こして辺りを見渡す
フェンスの向こうに小高い丘があった
そこに桜の木らしきものが生えていた
あれか、あんなところから見えるのか・・・。
2Zの・・・河上・・・。
ワックスを馴染ませた髪と薄い鼈甲の色眼鏡
敬語で淡々と話す様に違和感を覚えた
理由は分からないけれど
変な感じがした
無駄だ、思い返したって
勝手に昨日を再生しようとする頭を制して貯水槽に寄りかかる
・・・そう言えば河上、何だろう
太朗とかじゃないよな、まさかな。
国光とかイヅルとか色々考えて百面相している自分に気付いて溜め息が出た
止めよう、らしくない
また独りごちて俺は太陽に別れを告げた
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