小説

□黒き魔犬の牙
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今の敵機との距離はどうみてもミサイルロックの範囲、しかもオーバーシュート狙いの為に減速した今の機体ではフレアを撒いても回避は無理。
まさに最悪を絵に書いたような状況だ。

コックピットに最早うんざりするほど聞いたロックオン警告がまた響く。

(このまま撃墜されるなら…)

回避不可なこの状態でミサイルにしろ機銃にしろ被弾して機体と一緒に散るつもりは無い。

ならば、自分がやることはただ1つ、
(隊長がいつも言っていた"生き残れば大勝利"を実践するだけだ。)

そう思い射出レバーに手をかけた刹那…

『チッ』
「…え?」

そう、止んだのだ。
先ほどまで鳴っていた。
ロックオン警告が。

半ば無意識的に後ろを振り向くと敵機は機体を翻し自機から距離をとっており、敵機が居た場所には斜めに伸びた細い雲があるだけだった。

(…ん?白くて細長い雲?)
なぜか雲のことが引っ掛かった。
なぜなら先ほど迄はその雲は無かったはず、いきなり雲が発生するなんてことはありえない、ならば導き出される答えは…
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