Novel Oshitari×Atobe
□内緒話
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「なぁなぁ、跡部のあそこの毛ってやっぱり髪の毛と同じ色だったりすんのかな?」
放課後のクラブ活動中のひとこま。
どういうきっかけでこんな話になったのか今となってはわからないが、中学三年生男子が数人集まれば下ネタで盛り上がることはよくあることで。
そして今話題に上った人物はコート脇でテニス部顧問の榊と先程からずっと話し込んでいる。
部長と監督が部活にいるとはいえ、先程からずっと話し合っている状態で、今は特に大会が控えているわけでもない状況だということで、レギュラー陣といえども段々とサボりだすのは必然的だったのだろう。
そんな中、向日がふと口にした疑問に答えられる本人は下ネタ談義に花を咲かせている面子にはおらず……
例え本人がこの場にいたとしても、到底答えそうにもない質問でもあったりしたのだが。
そこで自然に注目を浴びることとなったのが跡部景吾の恋人忍足侑士。
付き合い初めて半年以上経つ二人はテニス部レギュラー内では公然の事実として知れ渡っていた。
そしてやることはやっているということまで、当人達が言い触らしているわけでもないのに皆知っていたりもした。
言わなくてもわかるほど二人の仲はラブラブだった、というわけだ。
「何見てるん……」
自分の話ではなかったはずなのに一斉に視線を浴びることになってしまった忍足は戸惑いながら、熱い視線を送る面々を見返す。
「えー……」
とダブルスパートナーの向日が口を開けば。
「だって忍足しかいねーじゃん……」
長髪を一つに括った宍戸が説明する。
「ねー!」
それに元気良く同意したのは普段は寝呆けていて使い物にならないジロー。
「あんなぁ……、そんなん言えるわけないやん」
忍足的には跡部の自分にしか見せない部分を自慢したいのは山々だったが、当の跡部が嫌がるので今まで自分から跡部の事を話すのは極力避けてきた。
「教えろよ侑士!」
向日が口を尖らせ催促してくる。
「誰にも言わないからさー」
宍戸まで。
「おしたり〜!」
ジローに至っては忍足に抱きついてきた。
ヤレヤレといった感じで、はぁ……と大げさなほど大きなため息を吐く忍足。
こうなったら言うまで付きまとわれ催促されるのは目に見えている。
チラッと跡部の様子を伺い見る。
まだ監督と話し込んでいて、二人ともレギュラー陣がこんな馬鹿話しをして盛り上がっているのを知ってか知らずか気にする様子もないようだ。
そして跡部と監督、忍足達の間は10メートルほど。
これなら話してしまっても跡部には聞こえないだろう。
「絶対に内緒やで?」