Novel Oshitari×Atobe

□何もいらない
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翌日。
天気は雨。
いったいどうしたというんだ、この天候の悪さは。
結局放課後まで雨は降り続け、部活は中止となった。
それでも跡部は生徒会があるので遅くまで残るのだろう。
俺は生徒会室へ行く。
ノックをしてみたが返事が無いので中へと入るが誰も居ない。
奥にある生徒会長室へと進み扉を開けると跡部がいる。
「・・・ノックくらいしろよ」
突然扉が開いて驚いたらしい。
「あぁ、すまん。誰もおらんから、お前も居いひんのかと思うて」
跡部は少し落ち着いたのか、また自分の仕事に戻ってしまう。
「雨が酷いから帰らせた。この時期に忙しいのは俺だけだし」
他の奴に手伝わせればもっと楽になるだろうに、それをしない跡部。
もっと要領良く生きればいいのに。
そう頑張ってばかりだと心配でしょうがない。
「お前何しに来たんだよ?用が無いなら帰れ、邪魔だ」
突っ立ったまま。一向に話し出さない俺に跡部が不審な眼差しを向けてくる。
「おぉ、せやった。これ、届に来たんや」
紙袋を少し上げて示す。
「なんだよ」
跡部はペンを置く。
「ホワイトデーのお返しや。まぁ、跡部のくれたもんに比べりゃ、全然返しになってへんかもしれんけど・・・」
跡部が手を伸ばすので、紙袋を渡してやる。
「侑士君お手製手作りクッキーや!」
跡部がラッピングを外していく。
「毒でも入ってんはねぇだろうな」
俺は笑う。
「景ちゃん殺して俺も死ぬって?どっちかって言うたら媚薬の方がえぇな」
乱れる景ちゃんが見たいと言えば、本を投げられた。
跡部が一枚クッキーを口に運ぶ。
俺はドキドキとしながらそれを見つめる。
結局最後まで味見しなかったのだが、どうなんだろう。
「んっだこれ?まっずい」
おえっと吐き出してしまった跡部に、俺は失敗かと嘆く。
「失敗って、おい・・・。練習しなかったのかよ?っつーか、持ってくる前に味見しろ、馬鹿!」
紅茶で口直ししている跡部に、酷い言われようと俺も一枚齧ってみる。
「うっわぁ〜、激甘やなぁ・・・」
あの砂糖の分量はやはり多かったわしい。
「お前、こんなもん食わせに来たわけ?」
跡部はご立腹らしい。
まぁ、こんなもん食わされたら誰でも怒るだろう。
「や〜、まぁ成功を前提に持ってきたしな。すまんかったな、邪魔して。今度ちゃんとした返し持ってくるわ」
とりあえずこんなもんではお返しになりそうにない。
俺は肩を落とす、
跡部は俺を見て、溜息を吐く。
「欲しい物がある」
俺は跡部を見返す。
「あんま高い物はやれんで?」
跡部はにやりと笑う。
この笑いが不敵で、俺は何をねだられるのだろうと身構える。
「世界で一つしかないモノだ」
俺は苦笑いを零すしかない。
そんなもん幾ら積めば手に入るというんだ。
中学生の予算ではない。
「俺は何でも持ってるし、何でも手に入る、でもお前だけは俺の意思じゃどうにもならない。お前が側に居てくれるだけで充分お返しだ」
手を握られ俺はそのまま引っ張って、跡部を抱き寄せた。
「なんでこない可愛いんやろ?離れなれへんのは俺の方やのに・・・」
跡部が望もうと、望まざると、俺はきっとこいつから離れたりしない。
「だからもう変なもん作ってくんなよ。俺はお前以外何もいらねぇから」
俺は抱き締める腕に力を込める。
俺の愛は現在進行形、急上昇中。
一体この思いに終着駅はあるのだろうか?
いやたとえ終着駅があったとしても、俺はその駅さえ越えてみせる。

言葉にならない程君を愛してる・・・。

END
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望月白兎
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