novel
□†報われないのは。†
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この世界で生きることを決めたあの日から。
ろくな死に方は出来ないと解っていた。
見上げれば、
鉛色の空が泣いていて。
辺りは血と錆の臭いが漂う。
周りを見渡しても、生き物の気配は見えず。
只々、降り頻る雨音と
今にも消えそうな
自分の呼吸音だけが響いていた。
「次の戦で北条を落とす。」
あの日、
“元主”が言い放った言葉に
身震いしたのを覚えている。
「佐助、お前には思うところが有るやもしれぬ。
しかし、」
解ってるなら、と詰め寄ろうとすれば。
主はまるで、
世界の誠をかき集めたような自信に満ちた声で。
「親方様の上洛のため。
やってくれるな?佐助。」
真っ直ぐな言葉、
真っ直ぐな眼差しで。
そう言われて。
心の中に
やりきれない嫌悪感を感じた。