novel

□†蝉時雨†
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------風の悪魔、風魔小太郎。



こんな名で呼ばれるようになってからは、
もう後戻りは出来ないと解ってたんだ。











『小太郎』




此の名前で呼んでくれるのは
この世でたった二人だけ。



その内の一人。


自分の御主人は、
先日から床に伏している。

もう、年も年だから。

2月ほど前から有る、武田からの圧力に、相当参っていたのだろう。

今では、
起き上がるのも困難で。

いつも自分を枕元に置いていた。

火に飲まれる小田原の悪夢を見て、魘されて。

起きる度に、御主人は弱っていく。








それでも御主人は

自分に“武田を討て”とは命じなかった。




 
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