novel
□振り返れば
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空は青くて。
吸い込まれそうなほどだった。
浜辺で偶然出会って。
お互いそれとない挨拶を交わした。
「よぉ、偶然だな、元就。」
「…そうだな。」
そのまま、いつもの無駄話に花が咲いて。
きっと、いつもみたいに二人で笑って別れるんだって。
誰だってそう思うだろ。
なのに、今日に限って。
元就はどこか光って見えたんだ。
「…おい!元親、聞いておるのか!?」
「は?…え?!何?!」
「だから言うておるだろう!!
今日は何故この中国へ参ったのかと!!」
話を聞いてもらえなかった元就は、怒って声を荒げた。
「そ、そんなおこるなよぉ!」
「貴様が惚けておるからだ!
…全く。せっかく浜辺に赴いたのが損ではないか。」
そういって、不機嫌そうに腰を下ろした元就。
俺は、聞き逃さなかったぞ。
元就、気づいてないのか?
毛利家の大将がわざわざ、
こんな浜辺に来たのは。
「……!!今のは無しだっ!忘れよ!」
「…ははっ俺のためってか?」
だらしなくゆるんだ頬。
当たり前だ。嬉しいんだ。
元就が会いに来てくれるなんて。