novel
□†報われないのは。†
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別にさ
殺すつもりはなかったんだ。
只、動けなくなれば。
愛しい人に危険が及ばなくなれば。
それだけで良かったんだ。
でも
“元主”の手捌きは見事に俺の脇腹を掻き切った。
「あー…、何なんだろ、俺の、してきた事って…」
情けなかった。
今思えば
俺はあの人たちと
全く同じことをしてたんだ。
「もう、
身体動かな、いし…なぁ…。」
コレは、何。
「小田原まで、まだ、3里も、有るのになぁ…っ」
この、
頬を伝う物は。
「会いたいなぁっ…、
小太郎…っ。」
一体、
何だったっけ?
意識が
遠退いていく。
霞む視界の中に見えた景色に
------あぁ、
本当に報われない。
と意識を手放した。
------霞む視界の中。
最期に見たのは、
悲しそうに泣きじゃくる
真っ赤な愛しい人だった。
END