novel

□†蝉時雨†
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------何故?



其ばかりが頭を駆け巡る。



何故、彼は連絡をくれないのか。
何故、御主人は武田暗殺の命を出さないのか。

何故、御主人は“もういい”なんて言うのか。


解らない事ばかりで。
苛立ちが募る。




それでも今はとにかく、今は武田を退けなければ。




そう思って、立ち上がろうとすれば。



御主人は震える手で自分をとめた。



「もういい。小太郎。」




“何が良いのですか、武田を止めなければ”


そう訴えれば、御主人は自分を見つめ、微笑んだ。



「武田方には、小太郎のお友達が居るのじゃろう…?
だったら戦わせる訳にはいかん。
小太郎の…初めての友達じゃ。ワシは、御前さんに友達が出来ただけで幸せじゃよ。」





“老いぼれはさっさと退散じゃ”


そう言うと、御主人は静かに眼を閉じた。





 
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