ナイトメア

□ナイトメア-1-
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テレビの電源を落としたようにぷつりと情景が切れれば、遠くからジリリとけたたましい音が鳴り響いた。
意識を浮上させた会南(えな)は、じっとりと汗ばんだ身体を不快に感じた。

-また、嫌な夢を見てしまった。

ある日突然見るようになった夢は不意にやってくる。
夢など曖昧な物に一喜一憂するのもどうかと思うが、この夢だけは何度見ても慣れない。
会南は鳴り続ける目覚ましを止め、布団から出た。音を止めた時計を見れば、とうに起きるべき時間は過ぎていて、会南は慌てて通っている高校の制服に袖を通した。
ばたつきながら家を出る頃には夢のことなど、すっかり忘れていて今は学校の始業時間に間に合わすべく、足を早めた。




少し身体が火照った頃、会南はようやく教室へと足を踏み入れる。
始業まで思い思いに過ごすクラスメートを見やり、どうにか間に合ったことを知り、会南は安堵の息を吐いた。
クラスメートに挨拶をかけながら、窓側の一番後ろに指定された席へと向かう。
ひんやりと程よい冷たさを持つ椅子に腰をかければ、少し汗ばんだ身体も静かに熱をひいていった。
「おはよう!会南」
腰掛けてすぐに肩を叩かれ振り向けば、感じの良い笑顔を浮かべた友人が立っていた。
「おはよう、愛香。」
「会南がギリギリなんて珍しいね」
「ちょっと目覚めが悪くて」
会南は今朝見た夢を再び思い出しながら苦笑した。
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