バサラ長編夢

□野菜は新鮮なものが良い
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で。
結局私はどちらのキャベツも買わず、今片倉さんの部屋の前にいる。



『なんだ、キャベツが欲しいのか。…だったら家に来い、分けてやる』

そう片倉さんが言ってくれて。


始めは断ろうと思っていたのに、有無を言わさぬ片倉さんに負けた。



私って、押しに弱いのかも……





ドアの前で待つこと、数分。片倉さんが出てきた。


…って。


「多…っ!」


片倉さんの持っていた袋は明らかにキャベツだけの膨らみではなくて。


「…ああ、キャベツと、他家にある春野菜詰め込んできた。」

「いや、こんなに貰えませんよ…!」

「どうせ、家にあっても腐らせてしまうからな……」


それに、と。
少し言いにくそうに片倉さんが私を見る。



「…先日の政宗様の礼、だ」


その言葉の意味が分からなくて、私は固まった。

…礼?私何かしたっけ?


一生懸命、記憶の引き出しを抉じ開けて、思い出す。


で、分かった。
あれか。先輩にレモネードあげたやつ。



「…お礼、なんて。大したことはしてないんですよ?」

「いや、政宗様も喜んでおられた。お前のお陰だ、感謝する」




返そうと思った野菜は、私の元に返されて。

悪いと思いつつ、ありがとうございます、と礼を言うと部屋に戻った。






部屋に戻って袋を見ると、まあ野菜の山。

キャベツはもちろん、アスパラガス、玉ねぎ、空豆、挙げ句の果てには筍まで入っている。



「…私、こんなに食べられないよ」


一人暮らしとしては多い量に、困りつつも、嬉しい。


思ったより、律儀な人だな。


また一つ、片倉さんのことが分かった気がして。
少しだけ微笑んだ。







続.
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