バサラ長編夢

□男は狼なのです
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助けられた時のまま手を掴まれて、アパートまで連れていかれる。

しかも、片倉さん、無言。


……え、怒ってる?




そうして、部屋の前のドアについて。




あの…、と声をかけようとしたら。



「…この、馬鹿野郎!」



急に大声で怒鳴られて、ビクリと肩を震わせる。


「夜中にふらふら歩き回るなんて何考えてんだっ!」


恐い恐いとビクビクしてたとのは比べものにならないくらい、恐い。




けど。


「助けてもらったのは、ありがとうございます。」




一応、護身術は知ってる。あれぐらいの男は倒せたと思う。


怒られたのは私が悪いから。それは分かってる。

けど、なんだか私は弱いんだって言われてる気がして。悲しいじゃない、もやもやした気持ちになった。



「心配してくれなくて、大丈夫ですよ」


強い訳ではない、ただの強がり。





「……チッ」

「…っ…!?」


片倉さんの盛大な舌打ちが聞こえた瞬間に、壁に身体を押しつけられて。

両手首をぎり、と音が出るぐらい掴み固められた。



「どこが大丈夫、なんだ?」



目の前にいる人は誰?

捕食者の眼をして、私を見る。
これがあの片倉さんだなんて信じられなくて。



「…か、たくら…さ…」

「…ほら、抵抗しろよ。できるんだろ?…じゃねぇと…」



私の手首を締めてる手とは違う手が、体を這う。

嫌だ、嫌だっ。
そう心は思っているのに、口は言葉を発してくれない。息が荒くなるだけ。




片倉さんの手がTシャツを擦り上げて、素肌に触れた。




「や、…いやぁ――…ッ!!」


もう涙が出てきて、止まらなくて。

叫びを上げたら、身体が解放された。
その場にペタンと座り込む。


足に力なんて入らない。




「…これで分かったか。男の力を舐めるんじゃねぇ」

それだけ言うと、片倉さんは部屋に戻っていった。



私はカタカタ震える身体を押さえるのに必死で。

足元で買ったアイスが溶けてたのが見えた。





知りたくなかったものを知ってしまったのかもしれない、私は。








続.
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