風の悪魔と腐女神

□百合 揺り 閖
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「ねぇ―――白は………市とずっと………一緒にいてくれるんだよね?」
『はい、勿論です…姫様は?』
「勿論よ…ずっと、ずっと一緒」

幼き頃の夢を見た。
閖前で二人で話した頃の。
市様の愛らしい頬が、照れて赤く染まる顔。
幸せだった。
なのに今は………


「長政様?……市のこと………見ててくれてる?」

貴女にはもう、あのお方しか見えていないのですね?
酷いです…私と言う人間を差し置いて…。
あのお方は…否浅井はもう亡くなられたのに…。
なのに貴女は…。
まだ愛しておられるのですね?

(私は貴女のために、家族も、里である場所も、友も、故郷も、心も、体も、全てを捨てたいうのに。

憎いのに…怨めしいのに…恨めしいのに…

なのに貴女が、私は憎く酷く愛おしい…。)

「白」

呼ばれたので市様の元に姿を現し、どちらともなく、抱きしめ合った。


『市様…』
「………なに………白?」
『愛しております』
「………ふふふ…私もよ」


口づけを交わす二人から、赤い血が抱き合う二人の間から、雫となり垂れ落ちる…。
どちらの血であるかだなんて、一目瞭然だった。



狂喜的な貴女に抱かれて

死ねる私は

なんて幸せ者なのかしら?



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