戯言・零崎・零崎描織の人間パレット
□―1章―
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『女神愛罪』かつて私はそう呼ばれていた。
それも、現実世界(ここ)ではない異世界で。
あのままで居たかったのかもしれない…そう殺人鬼という名のまま。
あの世界の人間のまま。
けど結局一賊は殲滅されて、人識や舞織んしか居ないし…これで良かったのかもしれない。
「ママ」
『あら、どうしたの??』
黒髪のショートカットに白い肌、目はクリッとした大きな黒い瞳の二重をした四才の息子が、首を傾げて私に抱きついた。
今私は幸せだ。
なんせ暖かい家庭を手に入れたからだ。
だから言わせて欲しい…。
『レン兄、軋兄、トキ兄ごめんね』
そして
『ありがとう』
一賊皆で写っている写真を眺めながら、私が言ったのを見て息子が心配そうな声色で話しかけて来た。
「ママ??大丈夫??」
『大丈夫よ』
「おーい、行くぞ」
「はーい」
旦那に呼ばれて愛しい息子が走っていく背中を見ながら、ゆっくりと両目をつむった。
思い出すのは、人識がレン兄にあのまずいカレーを食べさせられている場面や、トキ兄とアス兄とで一緒に買い物に行った頃。
目を開ければ…
「なぁーにしてんだ??」
笑顔で微笑む愛する夫が居る。
『うぅん、何でもないわ』
ねぇ―――軋兄…貴方は最後に聞いたよね、幸せだったかって、あの時は言わなかったけど、今なら言えるよ。
幸せだったよ、今も私は幸せ、だって…愛した貴方が目の前にいるんだもん。
「異世界に居たときの軋識って奴の事でも考えてたんだろう??」
『どうしてそう思うの??』
「……勘だ…」
ふて腐れたように言う彼が可愛くて、抱き締めると抱き締め返してくれた。
「愛してる…」
『私も…』
軋兄…確かに私は貴方を愛していました…。
いいえ、今も貴方を愛しています。
さようなら、そしてこれからもよろしくね。
私が飛んだ異世界そこは、作者西尾維新さんが書かれた…『戯言』『人間』シリーズだった。
「ママ」
車に乗りこむと息子が話しかけて来た。
「ママが異世界にいた頃のお話をして」
『えっ、でも』
ちらりと彼をミラー腰に盗み見るとニコッと微笑む。
「俺も聞きたい」
『そう??じゃぁ―』
零崎を描きましょう―――