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Re:短編小説
氷夜
[ID:hiine06]
「お、また書き込んでんのか?」
「……うっさい」
彼が、また後ろから覗き込んでくる。
しかし今回はパソコンを閉じたりせず、そのまま書きつづけた。
そんな私のようすに、彼がにぃっと笑う。
「また俺のこと? 物好きだね、君も」
「お前に言われたくない。だいたい、私に構ってる暇があるのか?」
「あるから構ってるんだけど?」
「……ああ言えばこう言う」
彼はくすくすと笑って、たのしそうに私を見ている。
「で、俺が見てるけど?」
「もういいの。これは、私の証だから」
私が言うと、彼はおどろいたように目を丸くした。めずらしい表情だ。
「書くことは、私がここに在ったと残すことだ。
いつか私は忘れられる。だが、私が在った証拠があればいい」
「……なんか、中二くさいよ」
「……うん、自分で言っててもちょっと後悔したよ」
「でも、いいと思う。そうだね」
忘れられない人間などいない。いつか必ず、そこにいた「誰か」は忘れられる。
でも、たとえ「私」が忘れられても、そこにいた証拠が残せれば。
私は、そこに在る。
それだけは、何者にも覆すことはできない。
私が在ったことは、誰にも侵せない。
「私は、私の存在を示す。そのため……ってわけじゃないけど、書くよ」
「ふーん……」
「ああ、もちろんお前のこともな? 私が在る以上、書かないわけにはいかない」
「マジか」
「ああ。だから」
私は振り返り、彼を見てにっと唇を引いた。
「もう、見られても平気だよ?」
「……ちぇ、つまんねー」
彼が唇を尖らす。私は得意げな顔で微笑んだ。
***
私と彼の話は、掲示板に書き込む分はこれでお終いにします。
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