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Re:短編小説
万里
[ID:notlook4279]
「納得出来ない」
そう言ってむくれる私に、私の愛しいその人は『まだ言ってんのか』と笑った。
まだ言ってんのか、じゃないわよ。
「修学旅行、なんで私と先生は一緒に行動出来ないの」
「俺が受け持ってるクラスにお前が居ないからだよ」
「じゃあ行かない」
「だーめです。行きなさい、今しか出来ねぇことは今すんの」
放課後の図書室。
吹奏楽部の練習してる下手くそな音や、グラウンドで活動する運動部の声を聞きながら。
私は、恋人であるその人を睨みつけた。
「私が他の男子と夫婦岩眺めながらチューとかしちゃっても良いってのね?」
「あらやだ浮気する気満々だわこの子」
「その余裕が腹立つのよバカ!」
「先生に向かって馬鹿とか言うなバカ」
来月、私は修学旅行に行く。
だけど、生徒な私と先生は当たり前のように一緒には居られない。
付き合ってるのに。
「悔しい」
「ガキだねぇ、やっぱり」
そう言って、涼しげな顔をして笑う恋人が憎らしい。
自分ばっかり大人ぶっちゃって。嫌い。
……うそ、好き。大好き。
だから腹が立つ。
私ばっかり、こんな子供で。
……でも、やっぱり。
行きたくないよ。
「だから先生も行かないで」
「それは無理。俺のは仕事だから」
「だって2組の女子とは一緒にバス乗るんでしょ、見回りとか行くんでしょ、プリクラとか一緒に入るんでしょ」
「まぁうちのクラスですからね」
「プリクラ撮るんだ!!」
「撮らねーよ」
しょーがねーでしょ、キミはボクのクラスじゃないんだからー。
そう言って、先生はあやすように私の頭を撫でる。
そういう余裕が腹立つの!!
「割り切ってください」
「割り切れない」
「数学得意でしょうが」
「じゃあキスして」
「おじさん、最近の若い子の話に付いてけないんだけど」
なんでそうなんのよ、そう言ってへらりと笑った恋人の余裕を奪ってやりたくて。
私は先生のネクタイを掴んだ。
「ここでキスしてくれたら修学旅行いく」
「……勘弁してよ。ここ職場よ?」
「私にはただの学校」
そう言って睨みつけた先。
複雑そうにガシガシと頭を掻いた恋人は、軽く私の耳に口づけて。
「早く卒業してください」
そう、微笑んだ。
…………なによ、なによ、なによ!!
ゆっくりと熱くなっていく頬を持て余したまま、私は手元にあった本を投げ付けた。
「だいっきらい!!」
「はいはい」
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